ものがたり絵 版画 サーカス 石居里佳
一枚の絵に込められた物語
(文・あゆわら代表 榎本)
「わたしの絵には、とっても長い物語があるんです!」
とある展示会で、画家の石居里佳さんから聞いたこの言葉は印象的でした。
石居さんの絵は、一枚一枚にいろいろな背景があるように感じます。
「何が描かれているんですか?」と質問したところ、絵の一枚一枚に本一冊分ほどの物語があり、その一場面を絵にしているとのこと。
その物語を聞いた後に改めて絵を見ると、絵の細部細部に意味が込められている事が分かります。物語の情景がありありと思い浮かび、感動が深まりました。
言葉だけでなく、絵で物語が完成しています。絵の力を実感しました。
少し長いですが、物語を掲載しましたので、みなさんもぜひお読みの上、絵をご覧ください。
「サーカス」 石居里佳・作
サーカステントで小間使いとして働く男の子のお話。
サーカスの雑用で目まぐるしく働くが、何をするにも絶望的に不器用。洗濯をさせれば干し場に運ぶ途中で転び、また汚す。皿を洗わせれば手を滑らせて割る、、、。
そのため、団員たちには笑われバカにされる日々をおくっていた。
そんな彼だが、仕事を辞めたいとはおもわない。なぜならサーカスを観るのが大好きだから。
このテントで働いていれば、チケット代を払わずに毎晩きらびやかなサーカスを観られる。
彼には密かに憧れを抱く少女がいた。
ダンサーの彼女は、まだ若いのに素晴らしい技術と華やかさを兼ね備え、観客を魅了するショーの花形。
生まれ持った才能だと脚光を浴びる彼女。ただ、彼だけは、彼女の陰の壮絶な努力を知っている。
彼女は毎晩、団員が寝静まったあと一人で黙々と練習をしている。ときには衣装をつけてまで、より美しく、より華やかに見える動きを汗にまみれながら日々研究し、訓練している。
とある日、彼は、仕事が終わらず、気づいたら、夜中になっていた。そのとき、スポットライトひとつの灯りの中、彼女が一心不乱に踊っている姿をみつけた。彼は、一瞬で心を奪われてしまった。
一方彼女も、彼がしばしば夜中まで仕事をしていることに気づいていた。笑われてもバカにされても手を抜かず、丁寧に最後まで仕事をやりきる姿に好感を持っていた。そのため彼女だけは彼がどんなにドジをしても、からかわなかった。
彼女は、夜中の練習中に彼を見かけると、時々親しく話しかけた。しかし、彼はいつも緊張のあまりろくな返事ができない。恥ずかしさにうつむき、一言くぐもった返答を発してそそくさ立ち去るのが関の山・・・。
彼自身、そんな態度しか取れない自分をとても歯痒く感じていた。
そもそも彼は、いつも周りにバカにされているので、自信がなく、人と話すのが苦手なのだ。
でも、「こんな自分に親しく声をかけてくれる彼女と、本当は楽しく話をしたい。」
彼は考えた。
そして、考え抜いた彼は、ある老人にこっそり頼み事をした。
その老人は、操り人形の演者。素晴らしい技術の持ち主だが、人形の演目はダイナミックさに欠けるので、時とともに削られ、今では前座に少し演じる程度。いまや、老人はなかば忘れ去れられた存在。
そんな老人は彼とともに雑用をする事もしばしば。頑固ですこし怖いが、彼にとって心安くいられる数少ない存在だった。
彼は老人に人形の操り方を教わろうとした。
彼自身だとまともに話せなくても、自分であって自分ではない存在である操り人形を介してなら、物怖じせずおしゃべりができるのではないかと考えたのだ。
ドジな彼らしいちょっと間抜けな思いつきだが、彼はどこまでも真剣。
そうして彼は老人に教わりながら、こっそり操り人形の練習を始めた。しかし壊滅的な不器用さは健在。老人になかばさじを投げられてしまう程。人形の手を挙げる動作さえ、まともにできない。
彼が人知れず悪戦苦闘していたある日、サーカスで事件が起こった。
彼女が出演するショーのアクロバットで接触事故が起き、転倒した彼女は衝撃で気を失ってしまった。テント中が上を下への大騒ぎとなりショーは中止に。
幸い意識は回復したものの、彼女は足を負傷し、治療が終わるまでステージを休まざるを得なくなった。
ステージが生きる全てだった彼女。食事も喉を通らないほど落ち込んだ。だが、ステージを中止させ団員に迷惑をかけた負い目と、心配をかけたくない思いで、努めて明るく振る舞っていた。
その前向きな姿を見て、団員たちは胸を撫で下ろした。
しかし、さまざまな雑用を担っている彼は気付いてた。そっと捨てられている食事のこと、夜中彼女のベッドからくぐもった泣き声が聞こえてくること。何気ない話をしている時も、指が白くなるほど拳を握り無理に笑っていることを。
彼女のステージ復帰は1ヶ月後に決まった。「奇跡の復活ショー」と題し、これまでより更に華々しいダンスステージが計画された。彼女は治療とリハビリ、それと新しい振り付けのダンス練習に明け暮れるようになった。
こんな時でも、彼は彼女に励ましの一言すら掛けることができない。
そのもどかしさをぶつけるように彼は、いっそう人形の稽古に励んだ。仕事の合間を縫って、寝食を削り、ついには夢の中でまで練習をした。
そうして2人は一言の言葉を交わす余裕もないまま、瞬く間に1ヶ月が過ぎた。
ショー本番初日の前夜、彼女はまた1人、ステージで汗を流していた。治療中「無理な練習はむしろ毒」とドクターに釘を刺されたが、明日のことを思うと緊張で手足が冷たくなり震えが止まらない。眠れるわけもなかった。しかし、どれだけ汗を流しても震えは消えず、その美しい顔が強張ってしまう。
さすがにもう寝なければと汗を拭き舞台袖に入った時、暗がりに動く影を見つけて思わず立ちすくんだ。
するとふわりと明かりがつき、暗がりから雑用係の青年が現れた。
ずいぶんとおかしな格好をしている。ピエロの衣装から拝借した帽子をかぶり、だぶだぶの作業ズボンには手作りの星模様が縫い付けてある。
一瞬の沈黙のあと、彼はニコっ!と満面の笑みを浮かべ口上を喋りだした。
「ようこそ、ようこそ。素晴らしき夜のサーカスへ!
麗しきお嬢さん、貴女はとっておきのお客様です!、、、」
彼女は驚いた。自信なさげに寡黙に立ち働いている普段からは想像もつかない溌剌な姿。なによりその明るい笑顔に惹きつけられた。心の底から楽しくて仕方がないと言わんばかりの表情につられるように、彼女の強張っていた顔が自然に解け微笑みが浮んだ。
彼は大好きなサーカスを日々見続けていて知っていた。笑顔は伝わることを。悲しい顔からは本物の笑顔は生まれないことを。
だからたとえ自信が無かろうが失敗をしようが、今宵ステージの上では思い切り笑って、彼女を楽しませよう。そう決めていたのだった。
彼が、たどたどしくも精一杯ひょうきんに人形を操りながら、彼女に薔薇を差し出すと、彼女の表情はいよいよぱっと笑み輝いた。いつしか手の震えも消えている。
この夜のささやかなサーカスは、2人にとって忘れられない特別なひとときとなった。(おわり)
石居里佳
1980年生まれ愛知県名古屋市在住。
看護師として10年近く勤めるも、イラスト、物語、お芝居好きが嵩じてイラストレーターに転身。
現在はクラシカルで繊細なタッチを活かし、懐かしく優しく、少し切ない、そんな物語を感じるイラストを描いています。
【商品の説明】
作家 石居里佳が、絵と物語を考え、表現したオリジナルアート。ジクレー印刷の版画です。(企画・制作・販売 :あゆわら)
仕様 | ||||||||
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絵を引き立てるシンプルフレーム
天然木を使用したフレームです。木目を消さないナチュラルな塗装。色も形もシンプルで、絵を引き立てる。今どきのおうちによく似合う定番フレームです。
ホワイト・ナチュラル・ブラウン・ブラックの中からお好きな色に変更することも可能です。ご希望の場合は、ご注文時備考欄に「○○フレームに変更希望」とご記入ください。
風景写真や風景画(絵画)などのアートをインテリアとしてお部屋に飾り、
癒やしの空間を演出しませんか?
新築祝、開店祝、結婚祝や誕生祝などのおしゃれなギフト(プレゼント)としても好評です
絵といえば、ピカソ、ルノワール、ゴッホのひまわりといった名画が有名。
そのほか、フェルメールの青いターバンの少女(真珠の耳飾りの少女)を思い浮かべる人も多いはずです。
西洋画だけでなく、赤富士・富士山や桜といった日本画もよく聞きます。
アートはインテリアとしてリビングの壁に似合うことも大切です。
たとえばディズニーのようなかわいい壁掛け・壁飾りもおすすめ。
絵画は癒し効果もあるので、プレゼントとしてのご利用も多いです。
納期目安:この作品は、通常1週間かからないぐらいから2週間のお届けです。お急ぎの場合は、ご相談くださいませ。精一杯対応いたします。
人気作品紹介
ひまわりの丘1 スペイン・アンダルシア 10,000円(税込11,000円) スペインのアンダルシア地方のひまわり畑をモチーフに、明るくさわやかな風景をイメージして制作された創作アートです。 あゆわら創業期から続く、オリジナルアート。署名、ロット番号入りでの販売となります。 |
壁掛け桜皮細工(かばざいく)
18,000円(税込19,800円)
200年以上続く日本の伝統工芸 桜皮細工。
その伝統工芸を今どきの家に似合うようシンプルに新しくデザイン。
発売開始が日経新聞で記事になりました。
楽天ランキング1位も受賞した人気作。
あゆわらオリジナル企画・販売作品です。
リーフパネル モンステラ 4,999円(税込5,499円) 両面ガラスで背景が透ける珍しいフレームに、模造の葉っぱを配置。 植物は、主張が強すぎず、どこでも飾りやすい。 水やりも必要なく、枯れないし、壁掛けなので場所もとらない。 手軽なみどりなのが人気の理由。 |
アートフォト 青空と雲
10,000円(税込11,000円)
青い空に白い雲、緑の大地。
これぞ、北海道 富良野という印象の風景。 雲の形から風を感じます。
ここに行って、しばらく寝そべりたいです。
モネ 庭園のアーチスト 15,454円(税込16,999円) 印象派の大画家クロード・モネ作 「アルジャントイユのモネの庭」の複製画です。 鮮やかなダリアの群生と庭に佇む男女の対比が印象的です。 109cmx44cmという迫力あるサイズでこのお値段。 しかも、絵の表面に手作業でデコボコをつけ油絵の質感を表現するゲル加工付き。 |
アートフラワー ゴールドエース
10,580円(税込11,638円)
枯れない・清潔・手間いらず。
お花育てが苦手な人にも好評。
生花と違い、雑菌が少なく、水やりなどのお世話も必要なし。
飾れる期間を考えると経済的。
光触媒で消臭・抗菌効果も。
お祝いでも定番人気です。
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ミディ胡蝶蘭(生花)
4,800円(税込5,280円)
かわいらしいお花が特徴的。
黄色や白の品種、他サイズも取り揃えています。
品種改良により9か月も咲き続けるほど強い品種も登場。
世界らん展日本大賞など各賞受賞。
お誕生日祝いでも好評です。
黄色や白の品種、他サイズも取り揃えています。
アートフレーム 虹 2,250円(税込2,475円) 虹さんが帽子をかぶってる。 虹に書いてあるメッセージは、 「I wish you are always Smiling.(ずっと笑顔でいられますように)」。 飾ってると、毎日笑顔で過ごせそう♪ |
レントゲンフォト レッドマグノリア
22,579円(税込24,838円)
お花のレントゲン写真。
通常の写真撮影ではこのように透けません。
お花のかれんさ、生命力を感じるアート。
ゲルアート 目ざめのキス 7,675円(税込8,443円) 青く広がる海。白い雲。 地中海でしょうか。 眺めていると潮風を感じそう。 絵の表面に手作業でデコボコをつけ油絵の質感を表現するゲル加工アートです。 |
アートグリーン 壁掛けフィロ
3,579円(税込3,938円)
光触媒フェイクグリーンの壁掛け。
壁に飾って、お部屋にナチュラルなグリーンをプラス。
枯れない上に、水やりの必要もない手間いらず。
光触媒の消臭機能付き。
みどりは、洋室・和室 どのお部屋にも合う万能アートです。
ゲルアート サマー コーブ 10,210円(税込11,231円) 海沿いに立ち並ぶカラフルな家。 青い海にのんびり浮かぶ白いヨット。 オレンジ・赤・黄色。あざやかなお花が咲く美しい庭。 こういう場所でのんびりしてみたい。 絵の表面にデコボコをつけ油絵の質感を表現するゲル加工。 1点1点手作業で制作しています。 |
おすすめ商品の紹介
【版画 絵画】ひまわりの丘1 スペイン・アンダルシア/インテリア 壁掛け 額入り 風水 アート アートパネル リビング 玄関に飾る プレゼント モダン アートフレーム おしゃれ LLサイズ
20,000円(税込22,000円)
最新 売れ筋・人気商品
絵画 アンリ・マティス Les oiseaux,1947(Silkscreen) インテリア リビング 玄関 廊下 寝室 壁飾り 額付き おしゃれ シンプル 鳥 青 アート ギフト 壁に飾る 絵 | 絵画や壁掛けの販売
27,000円(税込29,700円)
光触媒観葉植物 インテリアモンステラ1.7 〔フロアタイプ〕 インテリア フェイクグリーン おしゃれ アートグリーン 緑 リビング 鉢植え プレゼント ギフト 玄関 キッチン 部屋に飾る 御祝 店舗 | 絵画や壁掛けの販売
26,000円(税込28,600円)